>>> 東京からは、たったの3時間。あっという間の道のりで、スイッチの切り替えができないくらいだ。『チャイナビ』という番組の撮影で大連に訪れたのだ。飛行機を降り立つと、辺りにはなにかエキゾチックな香りが漂い、それとともにようやく中国に訪れたことを実感した。中心街に向かう車窓からの眺めは、予期していた風景とはだいぶ違っていた。道路は街路樹とともに整備され、建物もマンションやビルなど近代的なものが整然と並んでいる。私は雑然とした景色を想像していたのだ。これから数日間を過ごすホテルのまわりもアーケードやデパートなど、賑やかな繁華街に囲まれていて、いたって近代的なものだった。

 空港から直行で大連京劇団の舞台を見に行く。もちろん撮影だ。ここは建物が面白くて、もとは東本願寺、日本のお寺だったものをそのまま利用しているのだ。そのせいか親近感が湧く。チェン・カイコーの『さらばわが愛』を見て以来、京劇にはかなりの興味を持っていた。本場で鑑賞できるなんて! 覚えたての中国語でチケットを買う。舞台寄りの一番良い席はお茶のサービスがあって、すこしだけ優雅な気分。客席と舞台が近いので迫力満点、言葉がすべてわからなくても相当楽しめる良い舞台だった。

  夕食までの空いた時間に、宿の周りを探索。まっさきに目に飛び込んだのは食料品市場。一歩入ると、もわっといろんな匂いが襲ってくる。色とりどりのフルーツに、見たことのない野菜。湯気が立ちこめる一画では総菜を売っていて、コバラが減っていたので思わず足を止めてしまう。 お客さんたちが列を作っている向こうでは、流れ作業で次々とできあがっていく饅頭。1個1元(約13円!)という驚くべき値段に惹かれて、私も列についた。「猪」と 書いてあるから、イノシシのお肉なのかしら!? 今晩の食卓に並ぶのか、10個20個と買っていくお客さんたち。私はひとつ買って、その場で口にほうばる。あつつつつっ! じゅわっと溢れでる肉汁。ほのかに甘さを感じるしっとりふわふわの生地に、具はとってもジューシー、食べてみて「猪」というのは豚肉のことだとわかった。他にも市場には気になるものがいっぱい。隣の海産品のコーナーに沢山並んでいる黒光りしたナマコ。伊豆の海とかで見る大きなものではなく、8センチくらいの小さめサイズで、乾燥したのもあれば、生のものもある。いったいどんなふうに調理するのかしら。。。

  相当おなかを減らして向かった先は、水餃子専門店。白い餃子が山盛りでいくつかのお皿に並ぶ。見た目は同じだけど具は全部違うもので、豚と韮、あわび、白身魚、えびなどなど。隣の家族連れのテーブルに運ばれてきた大学芋のようなものが気になって、こちらにも注文してもらう。確かに大学芋、飴がねばりっこくってものすごく甘いのだけど、病み付きになる味。なんだか小学生の頃を思い出す。

  翌朝。起きてみると、あいにくの曇り空。ちょっと先の建物までも見通せないほど霧が立ちこめていた。大連を紹介するこの番組では、観光というより地元の人たちが週末にどんな遊び方をするのか、最近の流行を尋ねてみたり、そんなアプローチをする。だから昨日訪れた京劇も地元のお客さんがけっこう多かった。そして今日はサクランボ狩り。旅先で果物狩りなんて、めったにすることではない。天気の崩れを心配しつつも出発。農園までのバスの中で隣のさくらんぼ娘に中国語で話し掛けてみた。前もって私が覚えてきた言葉は「ワンチャオキキ。チィントゥクワァンシャオ。(私の名前はキキです。よろしくお願いします。)」。イントネーションが難しくて、なかなか理解してもらえない。それでも初めは何を言っているのだろう?と考え込む表情が、ちょっとづつ笑顔に変わり頷いてくれた。一生懸命に話を聞いてくれる彼らは親切でお喋り好きな人たちが多いようだ。

  夜に撮影で行ったレストランのオーナーもたくさん話してくれた。大連ではもちろん中国都市部では知らない人はいない!というくらいに有名なオーナーのおばちゃん。地道な努力と抜群の愛嬌でもって、屋台から始めた店が現在では立派なレストランになっている。店に入るとまず目がいくのが壁際に並んでいる大きな水槽。魚、貝、エビ、蟹、蛙… カエル!? 食べたい食材を選んで、調理法を決める。私たちは伊勢えびの炒め物とアワビを特製スープで蒸したものなどをいただく。アワビを食べたあとに、とろりとしたスープに入れて食べるごはんが美味しい。食事の最後に手のひらサイズの大きな餃子のようなものが出てきた。緑が透けていて割ってみたらニラがたっぷり、ところどころに椎茸。おいしくてぱくぱく食べていると、これナマコよ、とさり気なく教えられた。。。うっ。どうやら料理の主役はニラじゃなくて紛れていた椎茸もどきだった。こんなふうにして食べるとは。。。

  3日目。いろいろ撮影して午後に時間ができたので、先日の市場に再び行ってみた。この前は気付かなかったけれど、市場に中心にもうひとつのマーケットを見つけた。生鮮食品ではなく調味料や缶瓶詰め、乾燥食品、お菓子、飲料などが所狭しと陳列。気になったのは八宝粥の缶詰、パンダの絵柄のコンデンスミルク、ビニールパックの牛乳などなど。帰りの荷物が重くなってしまうから、買うのは断念。あとは海苔。半島に位置し三方海に囲まれる大連は海産物が豊富だそう。韓国海苔のようにメジャーではないかもしれないけれど、ここのもきっとおいしいのだろう。そういえば街中で、大きなトラックに採りたてのコンブが山積みになって運ばれていくのを何度か目にした。

  日が暮れてから大連のメインともいえる中山広場に訪れた。閑散としていた昼間とはうってかわり、なにかお祭りでも?と勘違いしてしまうほどの人々で溢れていた。輪になって蹴鞠をしたり、ラッパを吹く人、その音に合わせてフォークダンスを踊る人たち。凧を揚げたり、独楽をまわしたり。他に遊ぶことがないから、というけれど思い思いに時を過ごす彼らはとても楽しそうだった。

  あっという間に帰国の日。昼前には帰路につく。最終日だというのに、今朝も外は曇り空。大連に来てから毎朝毎晩霧が立ち込めていて、なんだか梅雨空の東京とあんまり代わり映えしない。この季節はいつもなのか、たまたまなのか。海に囲まれる大連はからっとした空気にどこからでも望める青い海を想像していたに。すこし残念だ。でも次に訪れる機会があったらそのときは天気に期待して、今度は港に出て船に乗ってみよう。水着を持って地元に人たちに混ざって海水浴をするのもいいかもしれない。地元の人たちと一緒に遊んだり、時を過ごす。今回の番組の撮影で、新しい旅の仕方を教えてもらったようだ。