| >>> フランスとアイスランドの時差は2時間。飛行機で3時間半ほどの距離だ。パリジャンにとってアイスランドはバカンスで訪れたい憧れの場所のようで、行くことを話すと羨ましがられる。でも日本人の私にとっては未開の地で、どんなところなのか想像がつかない。訪れたことがある友人に話を聞いても、なにもないところだよ、と。でも、なにもないのが良い、とも言っていた。2006年の夏、パリに三ヶ月暮らしていた私は、友人に誘われてアイスランドへ3泊4日の旅にでることになった。
アイスランドに乗り入ている飛行機はアイスランドエアーのみ。可愛らしいデザインのボックスに入った機内食の中身はリゾットとチキンナゲット、パンとチョコレート菓子。レイキャヴィク空港に到着。初めて訪れる空港はいつでもわくわくする。国の玄関口だから、ここでだいぶ印象が決まる。レイキャビクの空港は新しいのか古いのかわからないけど、妙にレトロなところもあれば近代的な洒落た空間もある。荷物を受け取るホールは煉瓦と木を多用した北国らしいぬくもりある雰囲気だった。バスに乗り換え一路市街へ。
夕方6時のレイキャヴィクは予想以上に明るい。首都であるこの町に総人口の三分の一近くが住んでいるらしいけれど、それにしても人が少ない。もっとも目立つ建物、ハトルグリムスキルキャ教会は町で一番高い建物でもある。エレベータで塔の上まで行くと、ざーっと冷たい風に吹き付けら身震い。ここは氷の国だった!と再認識。それにしてもこの素晴らしい景色は…。空気が澄んでいて遠くの遠くまで望める。パステルカラーの家たち、その先には港があって海。振り返ると木すら生えない不毛の大地がつづき、褐色の山々、ずっと向こうは氷河で覆われているのだろう。寒さを忘れて、みとれてしまう景色だった。
日が沈まないので、いつまでも散歩がつづけられそうだけど、いい加減夕食をとることに。どのレストランも外が明るいから中の様子がわからない。友人と鼻を効かせて、目抜き通りにあるレストランに入ったら、なかなか素敵なお店。暖かい色味のランプに、落ち着いた色調のインテリア。2階のウェイティングスペースには大きなソファが置かれ、家のようにくつろげる雰囲気。メニュはアイスランディック料理と記してあって、魚介中心のイタリアンとフレンチの中間みたいだ。前菜のスタッフドマッシュルームはブルーチーズが入っていて超美味。メインは名産のタラにしようか迷いつつ結局サーモンを選ぶ。滞在中レストランで食事をしたのはこの日だけだったけど、サーモンはやっぱり美味しくて、スーパーで売っているスモークサーモンとクレープみたいなパンケーキにのせて、毎日ホテルの部屋で食べてしまうほど。食事の締めくくりのデザートはアップルタルト。焼きたてに冷たいバニラアイス!言うまでもなく絶品。美味しいものに囲まれて、アイスランドでの一日目、幸せな夜を過ごしたのでした。
2日目。今朝も空は晴れ渡り、気持ちの良い一日だ。アイスランドに一緒に訪れた友人は仕事があるので、この日からはひとりで行動することになる。悩みつつもせっかくだからとツアーに参加し、アイスランド観光の王道コース、ゴールデンサークルを巡るツアーへ。レイキャヴィクから東へ東へと行く。まず訪れたのはケリズ火口湖。道中、周囲の景色といったら木一本生えていない岩だらけのゴツゴツした大地。突然現れるクレーターは、約3千年前も前からそこにあるという。まあるいぽっくりと空いた穴の中には水がたまり、太陽の日差しを反射してターコイズブルーに輝いている。美しいけれど、周囲の赤褐色の溶岩との対比で、なんだか妖しさも感じる。さらに東へ。次もさっきと同じように、真っ平らな大地に突然現れた。バスを降りるとゴォーっとすごい音が辺り一面に轟き、まるでナイアガラ(行ったことないけど)のように横に平べったく長い滝があった。大地だけ見ていると、どちらが山でどちらが海かまったくわからないけど、滝の落ちる方向でようやく見当がつく。果てしない風景。
さらに十数マイル東へ、黄金の滝を意味するグトルフォスの滝に到着。これらの源はすべて氷河で、この冷たい水が地球の溝へ、32mの落差を一気に流れ落ちていく。白煙と見間違うほどの水しぶきが辺りを覆い 、大量の水の行方を見ることはできない。豪快な景色の前に立ちつくしていると、ふと、崖っぷちに咲く小さな花が視界に入ってきた。そういえば、苔しか生えていない不毛な大地と思ったアイスランドでも、豊かな水を湛える川の周囲だけは緑が覆っている。こんなに豊かな水が冬には凍結するというから、どんなものなのか、寒さ恐ろしさ半分かなり見てみたい。同じ道を戻り、このツアー、ゴールデンサークルの折り返し地点 ゲイシールに到着。ゲイシールとはアイスランド語で噴出を意味し、辺り一帯には間欠泉が点在する。大きな地震が起きるたびに、それまで活性だった間欠が静まったり、新しい間欠ができたるするそうだ。今ではストロックル間欠泉が10分毎に高さ30mほどに吹き上がる。ぞくぞくするのがその吹き上がる直前。水の奥底からぼこぼこっと怪しい呻く音が聞こえ、辺りのものをすべて一度吸い込むかのように呼吸して、その直後、ぶほーーーっと吐き出す。まるで巨大な生き物の呼吸を見ているよう。というか地球の息吹ですね。続けて2回、吹き出すこともあって、皆の閑静も湧き上がる。
ここで1時間半の休憩。ランチタイムはやっぱりひとりだとつまらない。レストランには行かずスナックでパニーニとコーヒーを買って、青空の下でいただく。ツアー参加者のなかにはひとりで参加している人が他にもいて、やたら自分入りのスナップを撮っている(他人に撮ってもらっている)アジア人女性がいて、やはり同じアジア人同士気が楽なのか、しばしば私に近寄ってきて写真撮ってくれる?って。あまりに頼まれる回数が多いので面倒くさいのだけど、全部の写真に自分が写っていたら、それはそれで楽しいのかも…。ベンチでくつろいでいたら話掛けてきた。シンガポールから来たそうで、こうやってよくひとり旅をするそう。日本人に会うとやたらコーリアンか?って聞かれるのよ、とお喋り。彼女が去った後は、ドイツから来たという人話す。素人っぽくないカメラ機材に気になって尋ねてみたら、2週間かけてアイスランドを廻っているのだそう。いいなぁ羨ましい。私ももっともっと長くこの島に滞在したいもの。しかもその人、数年前まで日本のフジフィルムに努めていたそう!
ふたたびバスに乗り込むと、いつの間にかにぐっすりお昼寝。気づくとバスは細い一本道を走っていた。午後のハイライト、ここは世界遺産にも指定されているシンヴェトリル国立公園かしら? 西暦930年、世界初の民主議会アルシングが設置された場所として登録されている。バスに乗ったまま窓越しで、道沿いに走る細い一本の亀裂を発見。苔が覆うその火山岩の割れ目の底は決して見えない。奥底深く地底まで続いているようだ。ギャウと呼ばれるその裂け目は、ユーラシアプレートと北米プレートの境目。日本でいえば伊豆沖の海の中の亀裂と一緒。それが目の前にあるわけで、今この瞬間、地震が起きたらという恐怖に包まれる。このギャウはアイスランドを南北に貫いていて、国土は東西に毎年約1センチメートルずつ広がリ続けているんですって! 地底に続く割れ目先には断崖絶壁が現れる。地上に突起しているギャウ、その間をわたしたちは歩くことができる。長い道を行くと崖の上にでて、そこでコースは終了。これからレイキャヴィクに戻る。つづく。
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